0509
街の喧騒をかき分けて、歩く。
人、人、人。
ふと、現在地を見うしなう。
あたしはどこにでもいるふつうの25歳になった。
あのひともきっと、どこにでもいるふつうの30歳になったのだろう。
その年齢を、あたしが追い越したひとも。
「いつか話したくなったら、話してくれたらいいよ」彼が、あたしの背中の文字を撫でて言った。
そのとき、彼は理解してくれるだろうか?あたしをきらいにならないだろうか。
この業を、彼に背負わせてもよいのだろうか。
家族も友達も、恋人も。たいせつなひとたちがいる。勉強して国家試験を合格して就いた仕事は、それなりに頑張っている。
それでもこうして立ち止まったとき、思い出す。
あたしは、14歳だった。
太陽はその目に痛いほどの光を差している。生暖かい、春の風。自身の存在の輪郭をなぞるように、歩いた。
帰路につく。
0コメント