11/12/17

心がまるで焼かれるような痛みと、優しさ。

「俺には心がない」

憎悪に泣きわめき、弁解を求めるあたしにそう言い放った彼は、もうあたしの知らない人だった。一年半もの間、あたしは一体なにを愛していたのだろう?なにを見ていて、なにを信じていたのだろう?
彼は尚も虚像だと、言い張る。

「最後くらい、嘘、ついて」
震える声で言った。

「本当にそんな人が、この世にいるなら。
あたしはどうやって生きていったらいいの?」

彼はもうなにも言わなかった。


心がまるで焼かれるように、痛い。
脳裏に焦げ付いていく追憶、その夢のなかで、色褪せた虚像が笑いかけてくる。彼に心がないわけがなかった。嘘ばかりつくのは、心のあるふりをしないと愛されないことを知っているからだ。愛されるということがどういうことなのかも、知らないくせに。あたしがまったくの盲目だったわけでもない。もしも罪悪感や後ろめたさがあるのなら、犯した罪を人に許されることで、それを知ってほしかった。

けれど、彼は狼少年だった。




「俺、もうこの件には関わるなって言われてるんだけど」

「こんな真夜中に駆けつけたくせに」笑ってみせる。きっとあまりにも、滑稽な表情で。

「一人で泣くなら俺の前で泣けよ」

優しい人が言う。それでまた、あたしは泣き出してしまう。


「傷つきやすくて優しくて、厄介なあんたの心は
どうか捨てないで」

0コメント

  • 1000 / 1000