14/05/25

彼は煙草に火をつけて、雨空にむかって煙を吐いた。それに倣って、あたしも煙草に火をつける。
服一枚だけではまだ肌寒い。灰色の町。あたしが抜け出せない町。緑の葉は逃げ場もなく、雨に打たれている。

距離を別つのは肉体で、心が遠くなるわけじゃない。彼はそう言った。嘘だと知っていたけれど、最後に笑った。あたしたちは浅はかな生き物だ。

あたしは彼の首に腕を回し背伸びをして、彼が屈む。

「もう、行くよ」

彼のくちびるが震えていたのは、どうして。

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